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「PPAP」をピコ太郎さんとは無関係なベストライセンス株式会社の元弁理士・上田育弘氏が商標出願したとしてニュースになり批判が集まっています。
もしもピコ太郎さんが「PPAP」を歌えなくなったら大変なことです。
特許庁のHPを調べると「PPAP」という名前で商標出願がされています。
ピコ太郎さんが所属するエイベックスも10月14日に出願していますが、それより10日程早い10月5日にベストライセンス株式会社が商標出願しています。
「ペンパイナッポーアッポーペン」も同じくです。英語表記まで出願しています。
いったん商標権が登録されると、その名称は許可なく使用することはできなくなります。
もし登録されたらピコ太郎さんは「PPAP」を歌えなくなってしまうのか・・
目次
■ベストライセンス株式会社 上田育弘の経歴など
「PPAP」を商標出願したのは、大阪のベストライセンス株式会社。
ベストライセンス株式会社の住所は大阪にあるアパート。
代表を務めるのは上田育弘氏(53才)
ピコ太郎さんやエイベックスとは何ら関係はないといいます。
上田育弘氏の経歴の元弁理士
特許や商標については精通していて、出願に関するすべてのことを知っているので、その盲点をついています。
1994~2013年まで弁理士でしたが、3年前に弁理士の登録を抹消されました。
もっと別の事に使いたいとの理由で月15000円の会費を払わなかったからです。
現在は、弁理士を目指す人たち向けに資格試験ゼミナールの講師をしているそうです。
■上田育弘が商標出願する目的がヤバい
上田育弘氏はこう語りました。
「文字というものはいったんメディアに出ると、それはもう社会の共有財産」
「誰々のものということではない」
「商標は特に、人のものを盗む『冒認』という概念がない」
上田育弘氏が商標出願した目的とは
ライセンスするか、譲渡するか、または自分で事業を起こすか。
譲渡するとは、売買と使用権の許諾。
不正な利益を得ようとは思っておらず、適正な価格で譲渡または使用権を許諾したいと思っているそうです。
ビジネスモデルを立てることも目的なのだといいます。
特許庁に商標登録が認められれば、他人がその名称を使用した場合、ライセンス料を支払うことになります。
もし無断で使用した場合には、賠償を求めることもできます。
■実際のケースがあった
2016年群馬県太田市で、図書館と美術館の複合施設をオープンする準備を進めていました。
当初太田市では、「おおたBITO」という名称を予定。
五輪エンブレムで問題になった佐野研二郎氏にロゴも発注していました。
しかし太田市より先に、上田育弘氏が「BITO」の商標登録を出願。
上田育弘氏は太田市に対して権利の譲渡を申し入れ、太田市を拒絶。
「BITO」使用を断念して別の名前で施設オープンしました。
■上田育弘は実は有名人だった
ベストライセンス株式会社の上田育弘氏は、実は商標登録の世界ではかなりの有名人。
小保方晴子さんの「STAP細胞はあります」など、世間の注目を集めた言葉をかたっぱしから商標出願。
・北海道新幹線
・民進党
・やられたらやり返す
・じぇじぇ
・終活
・ゲス不倫
・LOVELIVE
2016年の1年間でベストライセンス株式会社名義と上田育弘氏名義で商標出願した数はなんと25,000件以上に上りいます。
これは、日本全体の出願数のおよそ1割にもなる異常な件数です。
■特許庁が異例の注意喚起
2016年5月、特許庁は上田育弘氏を名指しはしていないものの、大量の出願について異例の注意喚起を行っています。
自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
最近、一部の出願人の方から他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われています。しかも、これらのほとんどが出願手数料の支払いのない手続上の瑕疵のある出願となっています。
特許庁では、このような出願については、出願の日から一定の期間は要するものの、出願の却下処分を行っています。
引用:https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm
上田育弘氏は「わたしのことだと思う」と認識しています。
特許庁は「たくさん出願しろ」というべき立場だから、多出願について注意喚起するのはおかしいとも主張。
先に出願するのが出願競争であり、正当な競争、出願主義であると。
エイベックスとベストライセンス株式会社なら、ベストライセンス株式会社が先に出願しているから競争に勝っているという考えです。
■どうやって大量出願の名称を見つけている?
毎日新聞やテレビなどを見て、そこから商標出願できるものがないか目についた言葉をかたっぱしから商標出願しているそうです。1日50件になることも。
■商標登録は簡単にできる?
商標登録の審査は、商標出願してから早ければ半年以内
出願料金を支払って、公式審査が終わると実体審査に入ります。
実体審査が終わると、順調にいけば半年前後で商標登録できます。
出願料は、商標出願した段階では支払う必要はありません。
金額は1件あたり12000円から。
約半年の審査の段階では、出願料を支払う必要はないということです。
この半年間の猶予を利用して、企業への商標の売り込みなどを行うそうです。
商標出願
↓(半年)
↓ 必要書類などの準備
↓ 出願手数料の支払い(12000円~)
審査
↓(半年~1年)
↓ 登録手数料の支払い(4万円~)
商標登録
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上田育弘氏曰く
日本の知的財産権の制度の大きな欠陥は、ライセンス制度が活発にされていないこと。
なので今後ライセンス制度を活発にするためにどんな制度設計がいいのか、社会に訴えていきたいといいます。
このように制度の問題点を指摘していますが、いわば制度の問題点を逆手にとっているかたちです。
巻き込まれた側は大変です。
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基本的に商標登録は、早い物勝ちという「先願主義」という原則があります。
ただし
「他者の商品やサービスとして広く認識されている場合は認められない」
ということがあります。
■PPAP商標登録は今後どうなる?
「PPAP」「ペンパイナッポーアッポーペン」は今後どうなるのか?
上田育弘氏のほうからエイベックスに、ライセンス交渉開始の契約申込書を出そうかと思っている最中なんだとか。
申し込みのあとは、価格交渉をしてお互いが合致したところで契約をするのだといいます。
契約は、商標権を得る前でも後でもどちらも良く、そのために出願をしたとのこと。
上田育弘氏が先に出願しているので、エイベックスは無視できない。
「PPAP」の場合は
8月25日に「PPAP」がYoutubeで公開
9月28日にジャスティン・ビーバーがツイッターで「PPAP」を絶賛
9月29日にテレビの情報番組で「PPAP」を放送
この時点でかなり広く知られた状態です
その後
10月5日に上田育弘氏が商標出願
10月14日エイベックスが商標出願
という流れでした。
特許庁がどんな判断を下すのか注目です。
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もしベストライセンス上田育弘氏に商標登録をされたらどうなるのか?
「PPAP」を歌えなくなる
CDを販売できなくなる
といった可能性は低いとみられています。
商標出願した時点ですでに広く知られていたからです。
しかしグッズなど物販などには今後影響が出ることがありそうです。
そうなったら
上田育弘氏がピコ太郎さんに対して
「使用差し止め請求」
「損害賠償請求」をできる
ピコ太郎さんが上田育弘氏に対して
「登録の異議申し立て」
「登録の無効の審判申し立て」をできる
という状況になります。
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商標登録は、個人で行うには複雑
それを代行するのが弁理士です。
しかし上田育弘氏の場合、弁理士が自分のために商標登録を行っています。
■最後に
全て早い勝ちになってしまうと商標登録が現実にそぐわない結果になってしまいます。
現在は上田育弘氏1人ですが、これが複数になったら大変なことです。
日本の商品が中国で登録されてしまって、中国に進出できないとかは実際にありますし。
今のルールや制度ではカバーできない、道徳の問題。
しかし上田育弘氏は道徳うんぬんではなく正当な競争だと主張して、仕事として行っています。
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