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12万人を救う奇跡の医療器具「IABPバルーンカテーテル」を作った東海メディカルプロダクツの会長・筒井宣政さんのWikiは、心臓病の娘との歴史でもあります。
もともとは関西学院大学を卒業後に名古屋の小さな町工場「東海高分子化学」に就職。その後、次期社長として受け継ぐと会社の莫大な借金が判明。同じ頃、次女が誕生するも娘は生まれつきの心臓病ででした。
筒井宣政さんは娘の心臓病の治療費を稼ぐため、金儲けの亡者となって働き借金を返済し、貯金2000万円もたまりますが医者から娘は「治らない・余命10年」と宣告されます。
2000万円は医療に寄付しようとしましたが人工心臓の研究を勧められ実行を決意し東海メディカルプロダクツを設立。8年かかり動物実験に至りますが数百億を超える莫大な費用がかかるとわかり、研究を断念せざる得ないとき娘の一言に救われました。
その後、筒井宣政さんの東海メディカルプロダクツは「IABPバルーンカテーテル」の研究・製造に方向転換し、世界一の製品をつくることに成功。
しかし販売も波に乗ってきた頃、娘は23才の若さで死去しました。
筒井宣政さんのWikiプロフィールを紹介します。
目次
■筒井宣政 wikiプロフィール(画像)
フォーム工連 「平成29 年新春講演会」を開催 「娘が遺したものづくりの心」筒井宣政氏 https://t.co/nPNIJmOXpR pic.twitter.com/EeAvOmwU24
— プリント&プロモーション印刷販促ニュース (@p_promcom) 2017年1月31日
名前:筒井宣政さん(つつい のぶまさ)
生年月日:1941年生まれ
年齢:現在77才
出身地:名古屋出身
高校:東海高校
大学:関西学院大学経済学部
職業:東海メディカルプロダクツ会長
経歴
昭和39年3月 関西学院大学 経済学部卒業
昭和39年4月 東海高分子化学株式会社入社
昭和57年6月 東海高分子化学株式会社代表取締役就任
昭和56年10月 株式会社東海メディカルプロダクツ設立・代表取締役就任
平成3年9月 株式会社ヴァーユ設立・代表取締役就任
平成24年12月 株式会社東海メディカルプロダクツ・代表取締役退任・会長就任
今から40年以上前の名古屋
筒井宣政さんは小さな町工場「東海高分子化学」を受け継ぎ、ストロー・パイプ・テープ・ホースなどプラスチック樹脂の加工製品を作っていました。
年間の売上4000~5000万円で利益は200万円ほど。しかし会社を受け継いだ時に判明した借金があり、利益から税金を払った残金を借金返済にあてる状態でした。借金は莫大で返済に72年かかる計算でした。
ある日、商社マンの知人から「アフリカ女性向けの塩化ビニル製の髪結いひも」を作ると儲かると勧められ、単身アフリカへ行き市場開拓すると爆発的ヒット。日本で作り、アフリカで売りまくった結果、売上は1憶2000万円まであがり、72年かかる予定だった借金返済がなんと僅か7年で済みました。
■筒井宣政 心臓病で余命10年の娘を助けるため
筒井宣政さんは結婚した嫁・陽子さんとの間に3人の娘がいますが、「東海高分子化学」の借金が判明した時期1968年に生まれたのが次女・佳美さんで、生まれつき心臓疾患でした。
娘・佳美さんの心臓病は、心臓が正常に血液を流す事ができなくなる難病「三尖弁閉鎖症」しかし心臓疾患は小さすぎて9才になるまで検査もできない状態。筒井宣政さんは娘が7才頃に借金を完済してからは、手術費用として2年間で2000万円貯金しました。
1978年37才の頃、娘が9才になり医者に手術をお願いしますが東大の医師からもアメリカの大学からも「手術はできない」と断られ、治療法もなく余命10年を宣宣告されました。
数か月後、嫁・陽子さんから勧められ貯金2000万円を心臓病の研究のため寄付しようと、主治医の一人だった東京女子医科大学の医師に相談。すると数か月後、人工心臓の研究をしませんかと提案され、筒井宣政さんは嫁・陽子さんと夫婦で研究をスタート。
東京女子医科大学は日本一の心臓疾患の施設がありながら、私立なので国から研究費がなく人工心臓の開発ができない状態だったのです。
■人工心臓の研究(東海メディカルプロダクツ設立)
1981年40才の頃、筒井宣政さんは「東海メディカルプロダクツ」を設立。地元・名古屋と東京を行ったり来たりしながら一生懸命、人工心臓の研究をしました。しかしお金がかかります。
8年後にようやく動物実験までこぎつけ、大型犬を使った最初の動物実験が成功したときにはなんと8億円もつぎ込んでいました。莫大な費用がかかることが判明します。
動物実験は100頭ぐらい必要で、獣医や医師を雇って本格的に行うと100億円かかります。人間による治験臨床をして厚生省の許可をもらうには1000億円かかります。そんなお金はありませんでした。
もし1000億円を調達して人工心臓の製作に成功しても、当時は市場もなく、売れなかったら借金を返済できません。そこで当時の論文で知っていた「IABPバルーンカテーテル」に切り替えることを考えます。
しかしIABPバルーンカテーテルとは、心臓の働きが悪くなったとき、心臓の働きを一時的に助ける器具であり、これで娘を救うことはできません。
娘を救う夢を諦めなくてはならないと思っているとき、娘が父親にかけた言葉は「これからはその知識を病院で見かけた心臓病で亡くなる子供たちのために使って」でした。
■IABPバルーンカテーテルの研究
人工心臓からIABPバルーンカテーテル切り替えることに東京女子医科大学は大反対。筒井宣政さんが人工心臓をやめる=東京女子医科大学の人工心臓研究もストップするので困るからです。
しかし筒井宣政さんが人工心臓を続けるには1000億円を調達しなければいけいないので無理です。結局、東京女子医科大学の反対を押し切ってIABPバルーンカテーテルに切り替えました。
人工心臓とIABPバルーンカテーテルの材料は同じですが成分が少し違いました。出来上がったものは、どのメーカーのよりも優れ世界一機能がよく、抗血栓性がよく破れない、人間サイズに合わせた形のカテーテルであると高評価でした。5回バイオモデル学会で学会賞も受賞。
■IABPバルーンカテーテルの販売
製品化したら次は販売。
筒井宣政さんは日本全国の大学や病院を1人でまわりました。徐々に売れ始め、年800~1000本売れるまでは製造も販売も経理もすべて1人でやっていました。寝る暇もありませんがベンチャーなので。
その後、研究室を春日井市にある東海高分子化学の工場の敷地内に作りパートを雇って製造。学卒募集もしましたが、実績がなく相手にされませんでした。
1989年48才頃からは、学会発表・表彰・新聞記事になったので学校や学生のほうから逆に応募がくるように変わりました。
現在は学卒とパート両方入れて社員は200人。年間販売数は世界で6500本、日本では3500本ほどで国内シェアは2割。
※もともと経営していた「東海高分子化学」はどうなったかというと「髪結いひも」で利益を出していましたが、塩化ビニールを燃やすと環境ホルモンのダイオキシンが出ると批判され製造をやめました。命を救う器具を作る一方で、悪い噂が立つと困るし、円高で輸出も厳しくなったので、現在は不動産会社の業務を行っています。
■筒井宣政 娘が心臓病で23才で死去
IABPバルーンカテーテルでは娘を救うことはできません。心臓病を一時的に助けるためのもので人工心臓でないと救うことができません。
人工心臓をやめてIABPバルーンカテーテルに切り替えたとき娘は「お父さんとお母さんが自分の病気のために、人の命を救うような器具をつくってくれたことを、佳美はすごくうれしい」と言ってくれました。
売れはじめてきた1990~1991年頃はもう娘は最後でした。筒井宣政さんが「慶應義塾大学に売れたよ」「東北大学に売れたよ」と報告すると「ああ、お父さん、また一人の命を救うことができたのね」と喜んでくれました。
そうしてIABPバルーンカテーテルが年間1500本ほど売れた1991年58才、それを見届けるように娘・佳美さんは23才の若さで死去しました。
娘・佳美さんは重い心臓病だったのに、自分より他人を想う子でした。娘の死去によって筒井宣政さんは金儲けの亡者から「いい製品をつくって、人の役に立つ」という経営姿勢に変わりました。
娘の死去後、筒井宣政さんが評議員を務める日本人工臓器学会では、1996年から娘の名を冠した「Yoshimi Memorial T.M.P. Grant」を毎年スタート。人工臓器で優れた論文や研究をしたひとを表彰し、研究費100万円を贈呈しています。
■東海メディカルプロダクツとIABPバルーンカテーテル
設立:1981年
会社名:東海メディカルプロダクツ(春日井本社)
事業内容:医療器具の販売/製造/開発
住所:〒486‐0808愛知県春日井市田楽町更屋敷1485番地
TEL:0568‐81‐7954
FAX:0568‐81‐7785
★12万人を救うIABPバルーンカテーテルとは?
心筋梗塞や狭心症で倒れた患者を一時的に助ける心臓救急救命具です。
肺で酸素を取り込んできれいになった血液を全身に送るポンプの役割をもつ「心臓」は、自らの心臓にも血液を送って自らの心臓を働かせています。その心臓の筋肉に血液を送っている血管を冠状動脈といいます。その冠状動脈が詰まると血液の流れが悪くなり、心臓を動かす源が不足する病気が狭心症、心筋梗塞です。
IABP(Intra Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルはそのような心臓の働きが悪くなった患者さんに対し、心臓のサポートをするカテーテルです。特に心臓病で倒れた患者さんに救命救急的に使うこともあり、手術をすることなく簡単に心臓を助ける、とても大切な働きをするカテーテルです。
カテーテルを足の付け根あたりの動脈から入れて、心臓付近の大動脈内でバルーンを拡張(膨らます)して体積分の圧力をかけて他のところへ血液を送りやすくし、次に収縮(縮む)して心臓が血液を送り出し易くします。心臓のリズムにあわせこれらを繰り返すことで、弱った心臓のポンプ機能を一時的に補助します。このIABPバルーンカテーテルを使うことによって冠状動脈の血流を保ち、そして全身の循環血液も保つことができます。尚、このカテーテルでは悪くなった心臓を治すことはできません。あくまでも一時的に弱った心臓を補助するためのカテーテルです。治療するためにはPTCAバルーンカテーテルなどの治療用のカテーテルを使用します。
TMPのIABPカテーテルは日本人サイズに合わせて設計されており、血管を傷つけない、合併症を起こさない、バルーン事故を引き起こさないなど、人に優しい設計になっております。
引用:東海メディカルプロダクツ公式サイト
■まとめ
筒井宣政さんのwikiでした。娘を救いたいという想いから出来上がったIABPバルーンカテーテルは、12万人もの人々の命を救う奇跡の医療器具となりました。
大切な人をおもう心のパワーの凄さです。
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